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"鳴き雪"を聴く

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北海道大学低温科学研究所・前野 紀一

"鳴き雪"を聴く

 

数年前から「鳴き雪」を調べている。といっても、まだ研究は始まったばかりで、わからないことだらけだ。だいいち、雪道を歩くとき発する、あの独特の音を表現する適切な日本語が見当たらない。それにしても、西洋の言語に比べ表現が格段に細やかと言われる日本語に、雪の踏み音を表す言葉が存在しないというのは、ちょっと意外である。きれいな砂浜を歩くときの音には「鳴き砂」とか「鳴り砂」という名前があるのに。また、廊下の板の踏み音には「うぐいす張り」という素晴らしい呼び名が生み出されているのに。

 

外国でも、鳴き雪を表す特定の言葉はないらしい。昨年の6月にチェコであった着氷の国際シンポジウムの時にも、また7月にカナダであった氷の物理と化学国際シンポジウムの時にも、いろいろの国の知人たちにきいてみたが、答えは同じであった。それではというわけで私は、日本語では「鳴き雪」、その英語訳は「スインギング・スノウ」にしましょうと提案した。

 

鳴き雪は、雪国ではあまりにも日常的な現象であるために、私たちは、それを表現する言葉を創り出すことを忘れたのかもしれない。そして、もしかすると、鳴き雪にかくされた何かかけがえのないものの存在にも気付かずにいるのかもしれない。

 

雪の踏み音は、履物が下駄か靴かで違うし、踏み方によっても違う。また、雪の種類や温度でも違う。鳴き雪といっても、人によって「ザックザック」「サクッサクッ」「キュッキュッ」等々の違った表現が生まれる。この違いのメカニズムを科学的に調べようというのである。雪国の静かな街で、一人ひとりの一歩いっぽが生み出す魅力に満ちた鳴き雪、それに耳を澄ましたり、聴き入ったり、メカニズムを調べたりするのは、雪氷学でしか味わえない楽しみの一つである。

(北海道大学低温科学研究所・前野 紀一)

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