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2010年度 地域講演会

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陸別町:「しばれの街・りくべつと南極観測 -雪と氷が地球環境の謎を解く- 」

2010年度 地域講演会

(社)日本雪氷学会北海道支部2010年度 地域講演会

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テーマ:「しばれの街・陸別と南極観測

-雪と氷が地球環境の謎を解く-」

 

日時:2011年2月5日(土)15:00–17:00

場所:りくべつ宇宙地球科学館(銀河の森天文台)ホール

主催:(社)日本雪氷学会北海道支部

共催:陸別町しばれ技術開発研究所,南極OB会北海道支部

後援:陸別町

参加者:約150名

 

 

■プログラム

1)挨拶

(社)日本雪氷学会北海道支部長・高橋修平

北海道陸別町長・金澤紘一

りくべつ宇宙地球科学館長・上出洋介

2)講演会

  司会:亀田貴雄(北見工業大学)

(1)しばれ研との出会い          高橋修平(北見工業大学)

(2)しばれの街・陸別と南極観測        渡邊興亜(元国立極地研究所長)

(3)南極ドームふじコアに記録されていた地球の歴史・宇宙の歴史

                    藤井理行(国立極地研究所長) 

■全体概要

(社)雪氷学会北海道支部では,一般市民にむけた科学技術の振興と啓蒙活動を目的として,北海道各地における地域講演会を毎年開催している.2010年度は足寄郡陸別町において,「しばれの街・陸別と南極観測 -雪と氷が地球環境の謎を解く-」を開催した.
 
 陸別町では冬季の寒冷気温を利用して,南極ドームふじ深層掘削計画で使用予定の氷床深層掘削ドリルの開発実験や雪上滑走路造成実験などが1992年から実施されてきた.特に,深層掘削ドリルは陸別町での4回の総合開発実験を経て開発され,南極ドームふじ基地で3035mまでの氷床掘削に成功した.これらの実験では陸別町の寒さを使った「町おこし」を目的とした陸別町しばれ技術開発研究所の皆さんに多くの協力をしていただいた.また,陸別町では1980年から「しばれフェスティバル」が毎年開催されており,本年はちょうどその30周年に当たるので,今回の講演会はその記念行事としても実施された.
 
 講演会では,高橋修平先生,渡邊興亜先生,藤井理行先生に講演していただき,集まった150名を超える参加者は陸別町と南極観測との関わり,南極氷床の氷からわかる地球の歴史,宇宙の歴史について学習した.講演会終了後は,多くの方々はしばれフェスティバルにも参加し,「陸別町の寒さ」を堪能した.セレモ浜田で開催された懇親会にも多くの方々が参加した.
 
 この講演会には陸別町教育委員会委員長の石橋勉氏のお骨折りで,陸別小学校と陸別中学校の生徒さん約50名も参加した.地元の小学生,中学生も陸別と南極観測との関わりを具体的に知り,これまで以上に南極観測に興味を持ったと思う.これらの生徒の中から将来の南極観測を担う科学者が輩出するかもしれません.なお,今回の講演会を開催するに当たり,陸別町しばれ技術開発研究所(佐藤秀昭所長),陸別宇宙地球科学館(上出洋介館長),浜田旅館の皆様に協力していただいた.
 
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 図1 地域講演会の様子

■講演概要

しばれ研との出会い

高橋修平(北見工業大学)
 1991年1月,電話がかかって来て「陸別のしばれ研だけども,明日,伺いたい」とのこと.翌日,研究室にやってきた4名の姿を見て驚いた.皆,雪だらけの長靴を履いていた.聞くと「自動車会社用に氷路面を作っているのだが,長持ちする方法を教えて欲しい」とのことだった.
 それがきっかけで,南極用深層氷掘削実験(国立極地研と共同研究)(1992, 93, 94, 2002年;図2)が4回行われ,さらに雪を固めて作る南極用雪氷滑走路作成の実験(1998〜2005年)および冷熱利用の凍土実験(2009年)を行なった.また1992年から現在に至るまで,毎年,陸別地域および北見地域のあちこちの冬の温度を記録してどこが一番寒いか調べている.アメダス気温値より5〜6℃は寒い地点が何カ所もあり,-40℃を記録したこともあった.
 陸別は日本で一番寒い町であるが,もっと寒いところを調べて見ようと,シベリアのオイミヤコンでの2004〜2007年に温度観測を行い,-60℃の最低温度を観測した.この村の子供達は-50℃まで普通に学校に行き,-50℃から遅れて登校,-55℃以下でやっと休校とのことで驚きであった.

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図2 陸別での深層氷掘削機実験(2002年2月1日)

 

 

しばれの街・陸別と南極観測

渡邊興亜(元国立極地研究所長)

 私が初めて南極観測に参加した第11次越冬隊が建設した,わが国最初の内陸基地「みずほ観測拠点」は雪氷研究者による氷床雪氷層掘削計画の始まりであった.わが国の氷床掘削の歴史は平坦ではなく,24〜25次隊による「みずほ基地」での中層掘削の成功に至るまでにも,多くの人達の努力を必要としたが,その後のドームふじ基地での深層掘削計画の実施に至るまでには,さらに多くの困難に直面した.こうした困難を乗り越える過程での,しばれの町,陸別の「しばれ研究所」の人達の協力は忘れ難いものである.今回の講演会で与えられたテーマはそうした「陸別の町の人々と私たちの出会いを語る」であったが,講演会には陸別の小〜中学校の生徒さん達が多数参加されるということであったので,昔話は別の機会に譲ることにし,これからの若い人達に出来るだけわかりやすく「南極」を伝えることにした.

 講演では南極大陸について,その探険の歴史,わが国の探険,観測の歴史について,および南極の自然,特に動物,オーロラ現象を画像で紹介した.また,今年は20世紀の初頭の,南極点到達に探検家達がしのぎを削った南極探検「英雄の時代」に,日本人として初めて「白瀬南極探検隊」が南極大陸に上陸してから来年で100年になる.この機会に我々の大先達としての彼らの業績を紹介した.

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 図3 白瀬南極探検隊員と探検航路および内陸探検路

 

南極ドームふじコアに記録されていた地球の歴史・宇宙の歴史

藤井理行(国立極地研究所長)

 南極ドームふじ基地での氷床深層コア掘削は,北海道陸別町での掘削ドリルの実験を含め,長い準備の後,1996年12月に深度2503m (図4),また,第二期ドーム計画として,2007年1月に深度3035mに達した.得られたコアは,それぞれ,過去34万年,72万年をカバーする.第二期計画では,3シーズン目に3029m深に到達,ここまでの平均掘削速度は,160m/週を超え,3000mを超える深層コア掘削では,世界最速を記録した (図5,6).

 第一期計画で掘削した2503m深に至るコアの共同研究成果として,このコアがカバーする過去34万年,3回の氷期サイクルにおける気候と環境変化の歴史を紹介した.ミランコビッチサイクルに同期する変動周期が明瞭に認められるとともに,気温と二酸化炭素濃度,その他ダスト濃度など環境指標要素との関連が調和的であることを示した.また,現在の二酸化炭素濃度390ppmが,過去34万年間の最大値300ppmを遥かに超えた高濃度であること,そのために地球温暖化が顕在化していることを述べた.

 また,第二期ドーム計画の氷床コア研究の速報的な成果として,宇宙線生成核種による太陽活動と地球磁場,小惑星の衝突?を示す微隕石,超新星爆発の痕跡など,アイスコア研究のフロンティアを紹介した.

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図4 南極ドームふじ基地での深層掘削(1996年)

 

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図5 第二期計画第3シーズンで深度3028m達成(2006年)

 

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図6 最深部3035.22mのコア.72万年前の氷.

 

 

北見工業大学社会環境工学科 亀田貴雄

(TEL:0157-26-9506,FAX:0157-25-8772、E-mail: kameda@mail.kitami-it.ac.jp)

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