2013年度

2013年度気象水文分科会オーガナイズドセッション・総会


日時:9 月 18 日(水)研究会18:00~19:30,総会19:30~20:00

場所:雪氷研究大会(2013・北見)C会場(C221) (北見工業大学)


オーガナイズトセッション

今年度のオーガナイズドセッションは,「植生から見た雪氷はどのような顔をしているのか?」というテーマで行った.話題提供者は,梶本卓也氏(森林総合研究所),ならびに鄭 峻介氏(国立極地研究所)の2名であった.セッションの趣旨は,植物の生態や生理の視点から見える雪氷の姿について,第一線で活躍する専門家から講演していただくことにあった.今回の2名の講演者は,純粋に植物生態を専門とする研究者であり,分野外からの刺激を受けるという意味で,雪氷学会員にとって貴重な機会であったと推察する.最初に,梶本卓也氏からは,「積雪環境の変動からみた森林の分布,動態」というタイトルで講演があった.興味深かった内容としては,雪崩は雪氷学者にとって雪氷災害であり嫌われものであるが,一方,植物にとっては擾乱の要素をもっていることである.その一例として,雪崩は大きな木を倒すことで,林床に存在する樹木にチャンスを与え,森林を更新させて活性化するという見方である.また最後に梶本氏より,植物にとって雪氷は家族のような存在というコメントがあった.その理由としては,雪氷は時には厳しく,時には優しく,植物を見守ってくれるからだという.次に,鄭 峻介氏からは,「永久凍土地帯におけるカラマツ林動態と土壌水分環境」という題で講演がなされた.特に興味深かった内容としては,年輪解析によって,植物の過去の乾燥ストレスが分かり,現在の環境だけでなく,過去の環境履歴が植物の生死に関わるということであった.梶本氏と同様に,鄭氏からも,植物から見た雪氷の姿に対するコメントがあり,梶本氏と同意見で,雪氷は家族の様な存在ではないかということであった.植物から見える雪氷の姿が家族ならば,雪氷学者にとっても植物を家族として見る必要がありそうである.さらに,植物と雪氷が営む家庭生活を研究することが,生態学ばかりでなく雪氷学にとっても意義深く,新たな融合研究を生み出す機会となり得るかもしれないと考えさせられた.

 

総会

議長:兒玉裕二会長代理

大田岳史会長が,体調不良により欠席したため,児玉裕二前会長が会長代理として議長を務めた.

(1) 事業計画・収支報告

事務局の鈴木より,2012年度の収支報告と簡単に今年度の事業計画を報告した.事業計画として,研究会・総会の開催,分科会メーリングリストの維持・管理,分科会ホームページの作成・公開,雪氷辞典への協力,があることを述べた.また,収支報告では,収入・支出とも0円,収支0円であることを報告する.

(2) 雪氷辞典

分科会を代表して参加している斉藤和之氏の代理として,事務局・鈴木より防災研・阿部 修氏が作成した報告書に基づいて現状を報告した.質問として,会員価格での購入法について質問があった.総会終了後,鈴木が阿部氏に確認したところ,出版された辞典は支部会に配分され,主として支部会が販売するとのこと.また,雪氷学会員からの紹介として,非会員が辞典を会員価格で購入することも可能であるということであった.

(3) 来年度のオーガナイズドセッションのテーマ

 来年度のオーガナイズドセッションのテーマを募集した.その結果,積雪上への降雨の影響と流出に関するテーマが提案された.さらに,総会後の懇親会で,前記のテーマの他に,凍土流域からの流出というテーマも提案された.来年度のテーマとしては,雪氷圏での河川流出に関する話題が有力候補となった.

(4)国際雪氷学会(IGS)の日本開催に向けた提案

学術委員の大畑哲夫氏より,2018年~2020年頃に,IGSからIGS会合の日本開催に向けた打診があること,さらにそれに向けたテーマの募集を行う予定であることが報告された.その件に関して,雪氷研究大会終了後,鈴木啓助学術委員長から,各分科会宛にテーマ募集のメールが届いた.それを受け,メーリングリストを用いて会員各位から意見を募ったところ,気象水文分科会としては以下の2件を学術委員長宛に提案した."Cryosphere and Biosphere (under Changing Climate)"と「モデルにおける雪氷圏の表現の現状と将来」である.

 

(海洋研究開発機構・地球環境変動領域 鈴木和良)

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