2012年度 地域講演会
小樽市「鉄道を守る雪の研究」
2012年度 地域講演会
(社)日本雪氷学会北海道支部2012年度 地域講演会
テーマ:「鉄道を守る雪の研究」
日時:2012年12月15日(土)14:30-16:30
場所:小樽市総合博物館本館研修室
主催:公益社団法人 日本雪氷学会北海道支部
共催:小樽市総合博物館
後援:小樽市、NPO法人北海道鉄道文化保存会
協力:北海道旅客鉄道株式会社
参加者:約50名
ポスターPDF (437kb)
■講演会プログラム
「現在の除雪車両」 講師:岡本光隆氏,中村哲也氏(日本除雪機製作所)
当社は、札幌市手稲区の工場を拠点に、除雪機械・軌道モータカー等の開発・設計・製造・販売までを一貫して行う自己完結型の製造メーカです。冬期軌道用除雪車両にはラッセル・ロータ リ・高性能排雪モータカーなどがあり、今後はエコなハイブリッドモータカーも技術的に可能となってきました。講演では、多種多様な除雪車両についてお話しします。
「鉄道と雪 -新幹線の雪対策-」講師:鎌田慈氏 (鉄道総合技術研究所)
JRの線路総延長約2万キロメートルのうち、主に日本海側地域に位置する8千キロメートル(線路総延長の約40%)が「豪雪地帯」に敷設されており、冬季間には様々な雪害を被っている。 また、北陸新幹線、北海道新幹線など、豪雪地帯での開業が予定されている。講演では、鉄道における雪害の種類と対策についてお話しします。
■講演会関連行事
(1)パネル展「雪と戦う鉄道車両」
日時:12月12日〜24日
内容:雪景色の中を走る鉄道車両や雪をかき分ける除雪車両について紹介します。
(2)企画展示「鉄道おもちゃで見る北の鉄道」
日時:12月12日〜24日
内容:鉄道おもちゃで北国の鉄道風景を再現し、雪との関わりなどを紹介します。
参加者:1723人(パネル展示と企画展示)
(3)工作教室「雪結晶が見える万華鏡をつくろう!」
日時:12月15日 午後1時30分〜2時10分
内容 雪結晶のような模様が見える万華鏡を工作します。
参加者:45人
演示講師:荒川逸人(野外科学株式会社)、高橋修平(北見工業大学)、金田安弘(北海道開発技術センター)、白岩孝行(北海道大学)、丹治和博(日本気象協会)、鎌田 慈(鉄道総合技術研究所)、永田泰浩(北海道開発技術センター)、津田将史(北海道教育大学札幌校)
■事業詳細
日本雪氷学会北海道支部では,「雪氷」に関する啓蒙普及活動を目的として「地域講演会」を札幌以外の北海道各地において毎年開催しています.2012年度は,開催会場の小樽市総合博物館が「北海道鉄道発祥の地」に建ち,多くの除雪車両を展示していることから,鉄道と雪氷学との関わりを紹介する講演会を開催しました.講演会にあわせて,子供向けの工作教室,一般向けの鉄道車両パネル展示,幼児向けの鉄道おもちゃ展示もあわせて実施しました.事業の周知は,小樽市の広報紙,小樽市総合博物館および日本雪氷学会北海道支部のホームページを活用しました.参加者は,講演会50人,工作教室45人,展示1723人でした.
講演会に先立ち,工作教室「雪結晶が見える万華鏡をつくろう!」を実施しました.まずは,北海道支部長の高橋修平氏による開会挨拶と子供向けの雪氷クイズから始まりました.その後,野外科学株式会社の荒川逸人氏の指導により,子供たちはビーズが雪結晶模様に見える万華鏡を工夫しながら作成しました.
写真1:雪氷クイズ大会
写真2:雪結晶の万華鏡作り
工作教室終了後,講演会「鉄道を守る雪の研究」を別会場で実施しました.開会挨拶に引き続き行われた大人向けの雪氷クイズは,鉄道を趣味としている高橋支部長による難易度の高い問題でしたが,聴講者も鉄道好きの方が多く,クイズ正答者のトップを絞るのに苦労するほどでした.
講演の前半では,「現在の除雪車両」と題して,高性能排雪モーターカーHTR-600などを製作している日本除雪機製作所の岡本氏と中村氏から,除雪の方法や除雪車の仕組みなどの紹介がありました.さらに,除雪車の開発・製作の現場ならではの話しも盛りだくさんでした.
写真:講演会会場の様子
講演の後半では,「鉄道と雪-新幹線の雪対策-」と題して,鉄道総合技術研究所の鎌田慈氏から,様々な鉄道の雪害とその対策についての紹介がありました.特に新幹線の雪対策に関する研究については,スノープラウなどの実験の様子の動画をまじえて紹介があり,とても興味深いものでした.
写真:講演会講師 左から岡本氏、中村氏、鎌田氏
パネル展「雪と戦う鉄道車両」では,高性能排雪モーターカーが除雪作業をしている写真(北海道旅客鉄道株式会社提供)や往年の除雪車の写真(小樽市総合博物館収蔵)などを展示しました.
企画展示「鉄道おもちゃで見る北の鉄道」では,ディーゼル機関車DD14ロータリー除雪車や蒸気機関車時代の除雪編成キマロキなどの鉄道おもちゃで,鉄道と雪との関わりを紹介しました.この展示は,250両の車両で構成された大規模なレイアウトで,子供だけでなく大人にも関心を持ってもらいました.
写真:企画展示とパネル展
今回の地域講演会で,雪氷と鉄道との関わりの深さを改めて認識することができました.一般には,除雪車両や鉄道雪害対策設備は馴染みが薄いですが,鉄道に興味のある子供や大人は多数いるので,鉄道をテーマとした雪氷学の普及啓発活動の有効性を感じることができました.
大鐘卓哉(小樽市総合博物館)