Japanese Society of Snow and Ice

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2005年度支部研究発表会

— カテゴリ:

2005年6月29日(水)

2005年度支部研究発表会

 

日 時: 2005年6月29日(水) 10:00~16:30

場 所: 北海道大学 学術交流会館 第一会議室 (札幌市北区北8条西5丁目)

内 容:

SessionⅠ(海氷湖氷・極地) 10:00~10:45  

座長:河村俊行(北海道大学低温科学研究所)

 

○マイクロ波センサーAMSR-Eを用いたオホーツク海海氷移動解析②

戸城亮,榎本浩之,舘山一孝(北見工業大学)

 オホーツク海の海氷移動を知ることは海難事故の防止や防災のための情報としても重要である.本研究では天候に左右されにくい衛星マイクロ波データAMSR-Eを使用し,サハリン東岸から北海道に至る海氷移動の変化を解析した.その結果,従来作成していたSSM/Iによる氷厚および密接度と組み合わせることにより詳細な海氷状態を検討することができる.今後,強風時による氷盤破壊の追跡にも対応できるよう改良を検討している.

 

○電磁誘導式氷厚計を用いたサロマ湖広域氷厚観測

舘山一孝(北見工業大学),白澤邦男(北海道大学低温科学研究所),宇都正太郎(海上技術安全研究所),河村俊行,石川正雄,高塚徹(北海道大学低温科学研究所)

 海氷厚の調査にはドリルで開けた掘削孔より氷厚を測定する手法が一般的であるが,広域な分布を測定するには時間・労力の面で限界がある.地質調査や金属探知に利用されてきた電磁誘導センサは1990年代後半より非破壊式氷厚計として注目され,砕氷船や航空機に搭載して広範囲な氷厚観測が行われてきた.本研究は北海道大学低温科学研究所の電磁誘導式氷厚計を用い2004年と2005年2月,3月にサロマ湖で行った広域氷厚観測と測定精度検証実験の結果について報告する.

 

○南極半島James Ross島における気温・地温状況

森淳子(北海道大学工学研究科),曽根敏雄(北大低温研),Strelin, Jorge (Instituto Antartico Argentino),Trielli, Cesar (Univercidad de Cordoba, Argentina),福井幸太郎(極地研)

 南極半島は最近温暖化が急速に進んでいるといわれている.南極半島北東部のJames Ross島Rink台地は,最上部が氷帽に覆われ,その下位の斜面にはStone-banked lobeが発達している.筆者らは1995年からRink台地上で気温,1998年から地温の観測を行ってきた.今回は地温・気温の測定結果と,周辺地域の気温データとの比較,氷帽からの開放時期の推測について述べる.

 

SessionⅡ(吹雪・建築) 10:50~12:05  

座長:千葉隆弘(雪研スノーイーターズ),高橋章弘(北海道立北方建築総合研究所)

 

○積雪表面雪粒子の飛び出し風速の気温依存 

佐藤研吾,高橋修平(北見工業大学)

 地吹雪の発生する条件を調べるため,積雪表面の雪粒子の観測,実験を行った.屋外において,積雪表面にミニ風洞を設置して,雪粒子の飛び出す時の風速を計測した.同時に,積雪表面から採取した雪粒子の終端落下速度,安息角を観測した.また降雪時に積雪表面からサンプルを採取し,-5℃と-20℃の低温室に保存して,屋外の積雪との比較して気温の違いによる飛び出し風速,終端速度,粒形の時間変化を観測した

 

○柵上端からの剥離渦の挙動に関する基礎研究

廣田充伸,白濱芳朗(北海道工業大学工学研究科)

 寒冷積雪地域では,吹雪による吹き溜まりや視程障害が頻繁に発生し,交通障害を引き起こす原因になっている.これらの交通障害の防止策として防雪柵が設置されている.
 防雪柵の性能は,柵まわりの流れ模様に非常に影響を受ける.とくに,柵上端からの剥離渦が柵の性能を大きく左右すると考えられているが,その挙動については明らかにされていない.本研究では,柵上端からの渦の挙動を明らかにすることを目的としている.
 本報告では,柵近傍の平均速度,渦の挙動周波数ならびに渦の位置が調べられている.

 

○冬季における建築物応急危険度判定技術について

高橋章弘(北海道立北方建築総合研究所)

 冬季の積雪寒冷期において,大規模な地震災害が発生した場合,建築物応急危険度判定調査が円滑に実施されるためには,どのような対応方法や改善点が必要となるのか把握することが重要である.判定活動を効果的に実施するためには,地域性を考慮し,かつ被害状況に基づいた応急危険度判定を行うことが求められ,本報告では特定地域に発生した地震被害に対して実施した建築物応急危険度判定調査結果について,その報告を行う.

 

○畜舎施設の屋根上積雪荷重について-屋外観測の結果

千葉隆弘(雪研スノーイーターズ),小林敏道(コバ建築事務所),苫米地司(北海道工業大学),干場信司(酪農学園大学) 

 本研究では,既存牛舎屋根を対象に滑雪観測を行った.既存牛舎には2種類の塗装鋼板(新品材および劣化想定材)を設置している.観測期間は,2000年度~2004年度の5冬期間である.
 観測の結果,積雪荷重の評価に関わる屋根雪の堆積日数と最大積雪荷重は,観測冬期の気象条件に大きく左右される.その関係は,気温が低いほど堆積日数が増加し,積雪が多いほど最大積雪荷重が大きくなることを示した.さらに,滑雪時の温度条件を整理した結果,新品材は,堆積日数内の積算暖度と滑雪発生との関係が比較的相関が高い.しかし,劣化想定材の場合は,滑雪が発生し難いため前述の相関関係がみられず,新品材に比べて積算暖度が100℃前後大きい傾向を示した.すなわち,気象データから滑雪を考慮した積雪荷重の評価を行う場合は,滑雪の発生状況を積算暖度の増減で評価することによって,その発生状況に応じた荷重評価が可能と考えられる.

 

○雪庇と格子フェンス

竹内政夫(雪研スノーイーターズ)

 冠雪が成長しおおきくなった雪庇が落下してその下の物体等に損傷を与えることがある.落雪防止のために格子フェンスの有無による野外比較実験を行った.その結果次のことが分かった.①格子フェンスは落下防止だけでなく雪庇の形成や成長を抑える効果を持つ,②はみ出した雪庇部分の密度は小さく千切れて落下しても危険がない,③間隔4x4cm,太さ2mm程度の細い格子でも底面からのグライドがなければ格子間を雪が抜け出ることはない,④ツララは発生しても小さく,大きく成長しない.

 

SessionⅢ(教育) 12:10~12:25  

座長:兒玉裕二(北海道大学低温科学研究所)

 

○雪氷体験を通じた子供達の防災・環境保全の意識向上について

中村一樹,小坂克巳(日本気象協会北海道支社)

 平成16年1月の道東地方豪雪をはじめ,最近北海道では,豪雪,豪雨,強風,地震,津波等,度重なる自然災害による大きな被害が生じている.また,食の安全の確保や地球温暖化に対する取り組み等,市民の環境問題への関心の高まりが目立つ.近年は,防災・減災の取り組み,環境保全知識の普及手段として,体験型の学習による自己啓発が重要視されている.
 このような雪氷体験(実験,観察)を核とした,子供達の防災・環境保全の意識向上への取り組みについて報告する.
<報告内容>
・北海道大学構内における野外雪氷観察と室内雪氷実験の取り組み
・地震の被害を想定した札幌市広域避難場所公園での雪中泊体験
・実験と観察による小学校での防災教育の取り組み
・廃校グラウンドを利用した酸性雪の観察 など

 

SessionⅣ(道路Ⅰ) 13:25~14:25  

座長:伊東靖彦((独)北海道開発土木研究所)

 

○並木の雪害対策としての防雪杭の設置およびヒコバエ更新について -国道12号美唄市茶志内地区の1例―

斉藤新一郎(環境林づくり研究所)

 除雪にともなう並木の雪害は,防雪杭を設置することで,かなりの程度まで,軽減されることが明らかになった.けれども,杭の設置以前から,雪害を受けて幹曲がり,幹折れ,あるいは倒伏している並木の木々については,対策が提案されてこなかった.雪害木の多くの固体では,その根元からヒコバエ(萌芽幹)が立ち上がって,生き残りを図りつつある.それゆえ,母株を伐り,これらを後継木として育成することが提案される.維持管理において,技術的にも,経費的にも,新たに植え替えするより,はるかに望ましい.

 

○ヨーロッパトウヒ並木の雪害および保育管理手法について -国道275号浦臼町於札内地区の1例―

斎藤新一郎(環境林づくり研究所)

 北海道の全域において,国道の並木づくりは,それなりに成果が挙がりつつある.けれども,それらには,あと1歩ないしあと2歩のケースが誠に多い.すなわち,除雪による並木の被害,添え木・縄外しの遅れによる移植木の幹折れ,枝抜けなどが目立つのである.生きた工作物の成長にともなう保育管理マニュアルの欠如,生きた材料に関する取り扱いの不慣れ,人事異動に由来する保育の引継ぎの不備,などが成功に到らない要因である.演者は,こうした事例への保育管理手法を提案して,そのマニュアル化に貢献したい.

 

○視線誘導樹の視認性とドライバーの視線誘導樹への注視特性調査

武知洋太,伊東靖彦,松澤勝,加治屋安彦((独)北海道開発土木研究所)

 積雪寒冷地である北海道の道路では,ドライバーは吹雪による視程障害によって視覚情報の乏しい状態での走行を強いられている.そのため,道路の視認性を高めることを目的とした視線誘導樹などの視線誘導施設整備が対策の1つとして用いられている.しかし,視線誘導樹の整備事例や研究事例は少なく,その視線誘導効果は明らかになっていない.
 そこで視線誘導樹の視線誘導効果を把握するため,被験者実験による視線誘導樹の視認性評価や実道走行による視線誘導樹への注視特性調査を行ったので,その結果を報告する.

 

○鹿が起こしたか?支笏湖畔の雪崩

竹内政夫(雪研スノーイーターズ),山田知充(北海道工業大学) 

 平成17年2月19-20日,支笏湖畔の国道453号約4kmの間で31カ所の道路を埋める雪崩が発生した.雪崩の種類は乾雪表層雪崩で斜面角度約40°で自然斜面の高密度な樹林の間を縫って流れ下った.雪崩後の斜面には合わせて数十頭のエゾシカの群れがみられた.鹿の群れや斜面に残された踏み後から,積雪は安定しこれ以上の雪崩の発生はないと開通の判断材料にもなった.数頭の野生のエゾシカが巻き込まれていたが,幾つかの雪崩は鹿が誘発したことが考えられる.

 

SessionⅤ(道路Ⅱ) 14:35~15:35  

座長:永田泰浩 ((社)北海道開発技術センター)

 

○北欧における冬期道路管理業務の民間委託と性能発注について

浅野基樹(北海道開発土木研究所)

 北欧諸国では,道路管理の効率化とコスト削減等のため,道路庁の行政改革とともに道路維持管理業務の民間委託を行った.具体的には,道路庁の分割と公社化等,道路維持管理業務の市場化,性能発注の導入,摩擦係数による路面管理水準の設定および気象データに基づいた冬期道路維持管理業務の見積・入札等を実施している. 本報告では,2005年3月にこれらに関して現地にてヒアリングを行ってきたのでその内容を報告する.

 

○冬期歩行者空間における客観的評価手法について

舟橋誠,徳永ロベルト,高橋尚人,浅野基樹(北海道開発土木研究所)他

 近年,冬期歩行者空間における転倒事故の増加などにより冬期の歩行環境の改善に対するニーズは高まっているが,全ての歩行者の要望を満たすことは困難である.そこで,歩行者挙動・路面状態に関する客観的指標を用いて冬期歩行者空間の評価が可能であるかの検討を行った.その結果,転倒の頻度や歩行速度のような歩行者挙動に関する指標は,冬期歩行空間を客観的に評価する手法として適用可能であるが,路面のすべり摩擦係数のような路面状態による指標は,使用する測定機器・測定手法に改善の余地があることがわかった.

 

○冬季積雪路面の変化に関する研究

藤井崇(北海道大学低温科学研究所),岡村智明(日本気象協会北海道支社),石川信敬(北海道大学低温科学研究所)

 凍結路面の表面温度推定に関する研究を行った.札幌市内の国道に定点を決め,12月から3月に,表面温度,気温,路温,湿度,風速,日射量,降水量,交通量,路面状態を観測した.路面状態を乾燥,湿潤,積雪,凍結に分け,さらに日射量のある場合とない場合(昼と夜間),また,風速の大小(1m未満,1~2m,2~3m,3m以上)に場合分けをして,気温と表面温度あるいは路温と表面温度の関係について解析を行った.それぞれの場合の両者の相関を見た結果,いずれの路面状態であっても夜間で風速が2m以下の場合に,気温または路温から表面温度を推定できる可能性を得た.

 

○気象の時間変動と道路構造別冬期路面温度特性に関する研究

秋元清寿(北海道開発土木研究所)

 積雪寒冷地の冬期道路は,非常に滑りやすい雪氷路面の出現が多く,路面管理が重要な課題である.路面温度は,気温や降雪等の気象の影響を受ける他,土工部や橋梁部等の道路構造による熱特性の影響を受けやすい.本研究では,気象の時間変動に伴う道路構造別路面温度特性を把握するため,定点における気象観測と路面温度観測を行った.その結果,日射の有無が路面温度の変動に大きな影響を与えていること,橋梁部は,土工部より路面温度の変動が大きいこと,単路と交差点部の観測結果から車両からの放射熱の影響が大きいこと等が判った.

 

SessionⅥ(降積雪) 15:45~17:00  

座長:森淳子(北海道大学工学研究科)

 

○異なる森林生態系における積雪表面CO2フラックスと積雪特性の考察

粟田孝,兒玉裕二,石川信敬(北海道大学低温科学研究所)

 2004年11月から2005年4月まで北海道大学雨龍研究林内のトウヒ林とマツ・トウヒ混交林において,積雪から大気へのCO2放出過程における積雪の効果を検討するために,クローズドチャンバー法と積雪CO2濃度勾配法の異なる2つの方法を用いて積雪表面からのCO2フラックスが観測された.その結果,両林において,11月から2月の積雪初期から厳冬期にかけてCO2フラックスの日変化はほとんどなかった一方,3月と4月の融雪期においていくつかの異なる日変化パターンが見られた.

 

○森林樹冠による降雪の遮断蒸発量に関する研究

津滝俊,兒玉裕二(北海道大学低温科学研究所),中井太郎(JST/CREST),鈴木和良(JAMSTEC),石井吉之,石川信敬(北海道大学低温科学研究所)

 森林内の水収支を考えた場合,降雪の遮断蒸発量による水資源の損失は大きく,寒冷地域ほどその損失量は大きいとされる.1月中旬~4月末にかけて北海道北部にある母子里の針広混交林で,森林樹冠による降雪の遮断蒸発量に関する観測を実施した.森林の内外それぞれにおいてスノーサーベイを行い,また森林に隣接する観測タワーの異なる高度で氷の蒸発量測定をあわせて行った.氷の蒸発量に比べて森林内外の積雪水量には大きな差が見られ,樹冠上で遮断された降雪は昇華蒸発のみでは説明できないことがわかった.

 

○地中探査レーダーによる知床峠の積雪観測 

谷口優介,佐藤研吾,高橋修平(北見工業大学)

 地中探査レーダー(GPR)は地中に電波を放射することにより,地中内部の構造を非破壊かつ短時間で捉えられる小型の測定器である.このGPRを用いて2005年3月30日に知床峠における積雪観測を行なった.GPRはそりに載せてスノーモービルにつなげ,1秒毎に観測し,位置はGPSにより10秒毎に測定した.その結果,GPRについては地面からの反射信号が確認でき,時系列信号により積雪深分布を推定することができた.標高599mの断面観測地点では積雪深430cm,全層平均密度0.437g/cm3であり,観測区間での積雪深は60~430cmであった.

 

○AMeDASで計算可能な積雪層構造モデルの作成と積雪層構造の推定

齋藤佳彦(雪研スノーイーターズ),榎本浩之(北見工業大学)

 本研究では,日本各地に設置されているAMeDASの気象データを使用することを前提に,可能な限り詳細に積雪層構造を表現できるモデルの開発を行った.融雪過程も組み入れているため,雪崩予測への利用だけではなく,水文過程再現での利用も可能であると思われる.2004-2005シーズンの北見工業大学構内で行った断面観測と比較した結果,密度及び積雪深の変動傾向を良く表していた.

 

○北海道の冬期における大雨・大雪事例出現頻度の経年変化について

谷口恭・齊藤正美・須藤哲寛・中村一樹(日本気象協会北海道支社),中津川誠(北海道開発局石狩川開発建設部豊平川ダム統合管理事務所)

 冬期における大雪が災害をもたらすことは当然であるが,冬期における大雨も予期せぬ災害の原因となる恐れがあるので,北海道内における過去の冬期の大雨・大雪事例を抽出し,それらの現象の出現頻度の経年変化や地域分布を調査した.
 その結果,大雨・大雪事例の出現頻度は年代と共に増える傾向が見られたが,観測地点数が増えた影響も含まれている.
 また,大雨・大雪事例をもたらす気象条件を特定し,どのような気象条件下でこのような現象が起こりやすいかを調査したところ,大雪事例では南岸低気圧,冬型季節風,二つ玉低気圧が
 主な原因になっており,大雨事例では低気圧の直撃や南岸低気圧,二つ玉低気圧が主な原因であった.

 

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