Japanese Society of Snow and Ice

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2004年度支部研究発表会

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2004年7月1日(木)

2004年度支部研究発表会

 

日 時: 2004年7月1日(木) 10:00~16:30

場 所: 北海道大学 学術交流会館 第一会議室 (札幌市北区北8条西5丁目)

内 容:


SessionⅠ(氷河) 10:00~10:45 

座長:紺屋恵子(北海道大学大学院地球環境科学研究科)

 

○氷河地質学的観点からみた更新世東南極氷床の流動特性の復元-オーセングレーシャーベッドのテクトニクスに関する予察的報告-

岩崎正吾(北海道大学),三浦英樹(国立極地研究所),前杢英明(広島大学) 

 演者らは,2003年11月~2004年3月にかけて第45次日本南極地域観測隊(JARE45)夏隊として,東南極リュツォ・ホルム湾沿岸露岩域の氷河地形・地質学的調査を行った.そのうち,露岩域スカルブスネスに分布する氷河底堆積物(いわゆる「オーセングレーシャーベット」)に関する調査で,更新世の東南極氷床の流動に伴って,層厚10m以上もの極めて厚い氷河底堆積物が変形していたことが明らかになった.そのことについて,堆積物の組成・メソスケール構造を示し,これに基づいた過去の氷床の流動特性について報告する.

 

○北パタゴニア氷原・エクスプロラドーレス氷河の特徴と短期流動速度

澤柿教伸(北海道大学),青木賢人(金沢大学),安仁屋政武(筑波大学) 

 2003年12月に,南米・北パタゴニア氷原北東端にあるエクスプロラドーレス氷河で実施した現地調査について報告する.氷河の末端には,植生に覆われたターミナルモレーンがあり,そこから上流2kmはデブリに覆われ,アイスコアード・モレーンやハンモッキーモレーンを形成している.モレーンの礫間から葉片を採取し放射性炭素年代を得た.また,氷河末端から上流約5kmの間の6点でディファレンシャルGPS測位を行い短期流動速度を測定した.その結果,ターミナルモレーンのすぐ内側まで流動していることが明らかとなった.

 

○氷河水路の氷壁融解について:氷河での測量と室内実験

ISENKO Evgeni(北海道大学)

 夏期には,氷河表面の融解水が氷を解かし,水路を形成する.本研究では,氷河での測量と室内実験の結果を計算と比べ,水路の氷壁融解速度が水温,流速などによってどう違うかを明らかにしようとする.氷河での測量は,1998年 カフカス Fisht氷河,および2003年 パタゴニア  Perito Moreno氷河で行った.さらに,低温科学研究所の低温室で,氷ブロック内の人工水路の拡大速度を測定した.氷と流れている水との熱交換関係式に基づいた計算の結果は,氷河での測量と室内実験の結果と一致することが分かった.

SessionⅡ(屋根雪・着氷雪) 10:50~12:05  

座長:高倉政寛,堤拓哉(道立北方建築総合研究所)

 

○変電所屋外鉄構の冠雪に関する検討

高嵜祐介(北海道電力(株)) 

 変電所鉄構の冠雪は,変電所全体を覆う場合があり,雪が溶け出した際に電気的事故や設備破損を引き起こす要因となっている.その対策として鉄構は三角ビームなどが採用されているが,既存の鉄構取替が困難な箇所については抜本的対策がない.
 このため,鉄構の冠雪成長メカニズムの確認調査を行った.調査対象変電所での冠雪が見られた時の気象は,平均風速0.5m/sと風が弱く,平均気温が0℃以下であった.鉄構上に積もった雪は,日中気温が0℃以上で融雪し,夜間に冷却され,その上に冠雪が成長していくことを確認した.

 

○橋梁の落雪防止対策に用いる格子フェンスについて

千葉隆弘,竹内政夫((株)雪研スノーイーターズ),古田克宏(帯広開発建設部浦幌道路維持事業所),岳本秀人,植野英睦((独)北海道開発土木研究所)

 アーチやトラス橋のような道路上を構造物が横断する橋梁では,冬期間に部材の冠雪が道路に落下して道路交通に障害を及ぼす場合がある.その対策としては現在,塗装工法,落雪カバー工法,およびヒーティング工法がある.しかし,いずれの場合も完全に機能を発揮するものなっていないのが現状である.このことから本報告では,従来の対策工に代わるものとして,格子フェンスを用いて部材冠雪の落下を防止する対策工を屋外実験で検討した.
 実験は,ニールセンローゼ橋である国道38号豊頃町豊頃大橋の付近で行った.格子間隔を変化させた模型を屋外に設置し,タイムラプスビデオで模型からの落雪状況を連続観測した.その結果,格子間隔が12cmでも冠雪が格子を潜り抜けたものの,冠雪下層の氷板化した部分の落雪とつらら防止の目的で取り付けたプレートによって,冠雪上層の密度の軽い部分の落雪に留めることができることがわかった.さらに,その雪は格子間隔に相当する雪片状で落下することから,道路交通に大きな影響を及ぼさないものと考えられた.

 

○屋根雪の滑落雪に及ぼす降積雪時の外気温特性

伊東敏幸,苫米地司(北海道工業大学)

 勾配屋根における屋根雪の滑落は,降雪開始時から滑落するまでの外気温変化の影響を受けていることについて,暴露試験および滑雪実験の結果を基に評価した.

 

○北海道旭川市における屋根雪観測-中高層建築物の屋上積雪分布について-

堤拓哉,高倉政寛(道立北方建築総合研究所),苫米地司(北海道工業大学) 

 屋根上の積雪は風に影響され,吹き払いや吹きだまりにより不均一に分布する.屋根上の吹きだまりは局部的な荷重増加や種々の積雪障害に繋がる.現在,風洞実験や数値解析により屋根上積雪分布の予測に関する検討が行われているが,対比するための実測データが不足している.また,風の影響を強く受ける中高層建築物屋上の積雪性状や屋根面の断熱性能向上による影響などについては十分に明らかになっていない.本報では,北海道旭川市において,中高層建築物を対象に屋上積雪に関する観測調査を行った結果を報告する.

 

○換気装置の周辺部材で発生する氷柱及び氷筍について

高倉政寛,村田さやか,鈴木大隆(道立北方建築総合研究所),片岡尚(三菱電機),高橋博行(三菱電機ライフファシリティーズ),市岡博喜(メルコエアテック)

 積雪寒冷地域における集合住宅では,厳寒期に換気フードやダクト部材等の各部で,換気風量の低下,ダクト内結露,氷柱や氷筍の発生等の障害が発生しすることが少なくない.本研究では既存住宅で発生している障害の改善手法とともに,新築住宅の障害防止に要する設計情報を提示することを目的に,換気フードやダクト等のシステム部材で発生する諸障害について,実態調査をすると同時に実験的な検討を行った.

 

SessionⅢ(道路) 13:05~14:20  

座長:阿部正明((社)北海道開発技術センター)

 

○雪氷緊急体制導入への提言

石本敬志((財)日本気象協会北海道支社)

 豪雪や暴風雪の場合,北米では,スノーエマージェンシー(雪氷緊急事態)が宣言され,日頃の都市機能を変えて社会全体が雪害による社会的損失を最小限にする体制に入る場合のあることが知られている.これまで,話題提供されることはあっても,こうした制度の導入可能性が本格的に検討されたことは無いが,大規模雪害の場合,北海道の社会的影響を最小限にする一手法として,導入を真剣に考えるべき時期であることを提言する.

 

○脱スパイクタイヤ政策の歴史的評価と政策評価

浅野基樹((独)北海道開発土木研究所)

 戦後,雪寒法などの整備により,道路上の雪を取り除くいわゆる"除雪"事業を飛躍的に発展させてきた.その一方で,スパイクタイヤ粉じんによるいわゆる車粉問題から,1990年には,スパイクタイヤ粉じんの防止に関する法律が施行された.スパイクタイヤ規制は,冬期路面管理を最も重要な要素技術の一つとさせた歴史的事象であった.スパイクタイヤ規制の政策評価をロジックモデルにより行ったところ,関連各指標のモニタリングを継続しつつ,バランスの取れた望ましい脱スパイクタイヤ社会の実現を目指す必要があることが指摘できた.

 

○寒乾害および除雪対策を兼ねた道路緑化における越冬手法について

斎藤新一郎(環境林づくり研究所)

 公共事業としての道路緑化は,緑化基本計画が示されて,長大な距離を扱うことになってきた.それゆえ,予算の制約から,単価の切り下げが求められることになった.そこで,現地を調べてみると,無駄な冬囲い手法,誤った冬囲い方法が継続されてきたことが明らかになった.道路緑化の意義,適樹,簡易雪囲い,除雪害対策,などから,今後の越冬方法を検討した.

 

○美幌峠の防雪林の造成経過と改良方法について

斎藤新一郎(環境林づくり研究所),斎藤道義(網走開発建設部網走道路事務所)

 美幌峠の防雪林造成事業は,わが国で最大の規模であり,着手してから十数年を経過し,防雪機能発現が望まれている.部分的には,良好な成績であるけれども,部分的には,雪害を受けて不成績になっている.特に,2004年の大雪により,幹折れが大発生して,早急な対応が必要になっている.今回,積雪期と無雪期の調査から,防雪柵の改良,土壌改良,保育方法の確立などについて検討した.

 

○悪天候下での視線誘導設備の発光要件の検討 第1報

斎藤孝(松下電工(株))

 濃霧や地吹雪のような悪天候下では前方の見通しが悪いため,自発光型の視線誘導設備が道路線形の視認に有効である.そこで悪天候下で視認しやすい視線誘導設備の発光要件を検討した.本研究では,発光色と光度について検討した.濃霧と地吹雪とで兼用できることを目的として,光度の検討は,初期検討として視程の時間的変化の小さい濃霧時のデータを利用した.
 その結果,各視程における所要光度を算出することができた.今後は,視程の時間的変化が大きい地吹雪時に最適化した発光要件について検討する.

SessionⅣ(融雪) 14:25~15:25  

座長:兒玉裕二(北海道大学低温科学研究所)

 

○北海道・西ヌプカウシヌプリの岩塊斜面における越年地下氷の季節変化とその要因

澤田結基(北海道大学)

  本研究では,西ヌプカウシヌプリ(1254m)の岩塊斜面に保存される越年地下氷と地温のモニタリングを,約3年間(2000.11~2003.12)行った.その結果,地下氷の季節変化は,4つのステージ(停滞期,急成長期,緩成長期,融解期)に分けられた.岩塊斜面の地下氷は,春~夏に地下空隙に流入する融雪水・降水が地下空隙で再凍結することで成長する.
 また,融解は秋季のまとまった降水イベントと同調的に生じた.積算寒度と氷の成長量を比較した結果,冬の寒さが翌春~夏の氷成長量を決定することが示唆された.

 

○熱収支法を用いた立山山岳地域における積雪深変化の推定

津滝俊(北海道大学),川田邦夫(富山大学)

 北アルプス立山連峰において,4月1日から消雪日までの積雪深変化を推定するために融雪熱収支を算出した.その結果,2003年の推定消雪日は浄土山(2,830m)が6月18日,室堂平(2,450m)が7月6日で,浄土山では2日,室堂平では4日ほど実際の消雪日よりも早くなった.両地点の全融雪熱量を比較したところ,融雪初期には全融雪熱量に占める放射収支量の割合が大きいため室堂平の方が大きいが,梅雨入りを境にして,気温の上昇と悪天候による顕熱,潜熱フラックスの増加により浄土山の方が大きくなることが分かった.

 

○北見・網走における今冬の大雪と融雪出水

石井吉之(北海道大学)

 03/04年冬期,北海道のオホーツク海側地域は2度の大雪に見舞われ記録的な積雪量になった.大雪に伴う様々な障害に加え,もともと降水量が少ない地域であるために春先の融雪洪水災害が懸念された.しかし,結果的には大した融雪洪水にはならなかった.その理由として,まとまった雨もなく融雪が穏やかに進んだことや,ダムによる流量調節が効いたことなどが挙げられるが,最も大きな要因は,そもそも河道計画が夏や秋の異常な大雨にも対応できるように策定されており,積雪量が例年の2倍近くあっても融雪出水には十分対処可能であったことである.

 

○スウェーデン・ストール氷河での熱収支観測にもとづく融解量分布

紺屋恵子(北海道大学),Regine Hock(ストックホルム大学),成瀬廉二(北海道大学)

 2003年夏季,スウェーデン北部のストール氷河で気象観測を行った.氷河の中央部で風速,気温,湿度について4mの鉛直プロファイル観測と放射4成分の観測を行った.
風速,気温とも氷河特有の鉛直分布がみられた.また,氷河上3地点で同項目について1mの高さで観測したところ,場所による変化がほとんどなく,氷河上で一様であったといえる.これらの観測に基づいて行った熱収支計算を氷河全域について行い,その分布を表した.

 

SessionⅤ(降積雪・雪崩) 15:30~16:30  

座長:松沢勝((独)北海道開発土木研究所)

 

○積雪の固有透過度と比表面積

荒川逸人(野外科学(株)) 

 積雪断面観測における雪質の判定は観測者によりばらつきやすいため,雪質の数量化を行うことは,客観的な結果を共有できるという意味で意義が大きいし,積雪モデルにおける雪質判定にも利用できるものと考えられる.密度は測定が比較的容易で利用しやすいパラメータであるが,同密度でも雪質が同じとは言えない.そこで,筆者は雪質の数量化を目指して,固有透過度と比表面積に着目し,1993/94冬期に(1)灯油による飽和透水係数の測定と(2)片薄片写真を用いた比表面積の測定を行った.今回は,当時得られたデータについて紹介する.

 

○表層雪崩発生予測手法の開発

西村浩一,平島寛行,佐藤篤司((独)防災科学技術研究所),馬場恵美子(北海道大学)

 表層雪崩の発生予測手法の開発を目的として,ニセコアンヌプリ800m地点に自動気象観測システムを設置するとともに,湯ノ沢を中心に積雪の断面観測を実施した.対象域内の気象条件と積雪深は,斜面方位,地形等に大きく依存する.そこでまず定点での気温,風速,日射などの気象観測結果を広域に拡大するアルゴリズムを開発し,吹きだまり分布(積雪深分布)を算出した.さらにこの結果を積雪変質モデルに代入し,50mの格子間隔で対象域内における積雪安定度(雪崩発生危険度)分布を求め,観測結果との比較検討を行った.

 

○2004年1月道東地方の大雪 -北見市の積雪-

榎本浩之,高橋修平,渡邊 誠,齋藤佳彦,山本 徹(北見工業大学)

  2004/1/13~15に道東地方一帯は大雪となった.北見では降り始めから110cmの降雪があり,観測史上最深の171cmまで達した.これは,二つの低気圧が根室沖で急速に発達したためであるが,アリューシャン列島には勢力の強い高気圧があったため低気圧の進みが非常に遅く,特にオホーツク海側で大雪が続いた.大雪と吹き溜まりにより交通が麻痺して市民生活にも多大な影響を与えた.市内の積雪状況などについて紹介する.

 

○北海道における大雪発生の長期傾向について

中村一樹,齋藤正美,須藤哲寛,谷口恭,山口浩司((財)日本気象協会北海道支社防災気象グループ)

 今年(平成16年)1月13日から16日に道東地方を中心に記録的な大雪となった.このため,交通機関は麻痺状態となり,住民の生活に大きな影響があった.
 全道の気象官署における長期的な観測データを基に,日平均気温を雨雪判別条件要素として日降水量から大雪の発生を抽出し,その傾向について分析した.その結果,全道的に見ると,昨冬の大雪発生数は,発生数が多かった1970年代に匹敵することがわかった.
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