2025年05月12日

雪氷ウェビナー第10弾 「関東・中部・西日本支部賞 受賞者講演会」(オンライン)

今回の雪氷ウェビナーは、2024年度日本雪氷学会関東・中部・西日本支部賞の受賞者講演会を雪氷学会会員の皆様へ配信いたします。皆様ふるってご参加ください。

[1] 論文賞
井上 崚(大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 国立極地研究所 特任研究員)
Inoue, R., Aoki, T., Fujita, S., Tsutaki, S., Motoyama, H., Nakazawa, F., and Kawamura, K.: Spatial variation in the specific surface area of surface snow measured along the traverse route from the coast to Dome Fuji, Antarctica, during austral summer, The Cryosphere, 18, 3513–3531, https://doi.org/10.5194/tc-18-3513-2024, 2024.

(選定理由)
表面積雪の比表面積(SSA)は積雪の粒径や変態によって変化し、積雪のアルベド等の光学特性に大きな影響を持つ重要なパラメータである。これまで、SSA は測定に要する時間や精度の制約から、限られた地点でのデータしか得られていなかったが、本研究では筆者らの研究グループが開発した HISSGraS を用いることで観測に要する時間を 10 分の 1 に短縮し、南極大陸の沿岸から内
陸に向かう約 1000km のトラバースルート上を約 20km 間隔で 2 往復して 215 セットに及ぶ観測データを取得した。
このような従来にない広域多点観測により、沿岸 15km〜500km(標高 615m〜3000m)では標高や気温に依存せず有意な増減傾向がみられないこと、500km より内陸部では内陸に向かって表面の形態や気象条件によって SSA が増加(粒径が減少)することを明らかにした。さらに、トラバース時の気象観測および自動気象観測データを合わせた解析により、SSA に対して温度による積雪の変態、降雪頻度、風による雪の堆積抑制などが重要な要因であることを解明した。一連の結果は、衛星観測や数値モデルの検証データとして極めて貴重なものであるとともに、南極氷床の質量収支算定の基礎となる積雪の物理的性質の変化を推定する上でも重要な成果である。
以上の理由により、井上崚氏を、論文賞の受賞候補者に選定した。

配信対象:雪氷学会員
講演者:井上 崚
日時:2025年6月3日(火)15:20-15:50
Zoom:一週間前までにお知らせいたします.
参加費:無料

ポスターはこちらから↓ 
https://www.dropbox.com/scl/fi/c5o1xretitpyzao8w21vr/webinar20250603.png?rlkey=m749ethydukfmmcbaymnctl2m&dl=0