2002年度 地域講演会
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カテゴリ:
地域講演会
沼田町:
2002年度地域講演会
(デザイン:北海道開発技術センター 新森紀子さん)
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2002年度から「総合的な学習の時間」が全面実施されました。今回の支部地域講演会では、教育素材としての 「雪や寒さ」の可能性をさぐりました。教育関係の雪氷の専門家が先生に扮し、実験を含めた楽しい授業の 「雪と氷の実験教室」、雪氷を利用した教育現場の事例紹介などの「トーク&ディスカッション」を行いました。 当日は降雪による荒天にもかかわらず、実験を行った小学生20名を含めて42名の方が参加し、理科学習のあり方などについて 終了時間が1時間半も延長するほどの熱心な討論が行われました。今講演会の開催にあたって多大なるご協力を賜った沼田町および北海道開発技術センター の皆様にこの場を借りてお礼申し上げます。 |
テーマ: 素材としての「雪と寒さ」 ー雪と氷の教材化ー
日 時: 平成14年11月9日(火)13:00~17:00
会 場: 沼田町生涯学習総合センター「ゆめっくる」(雨竜郡沼田町南1条4丁目)
参加費: 無 料
講演題目:
第一部 雪と氷の実験教室(モデル授業)
13:00-13:45 | 「氷と遊ぶ」 | 北海道教育大学 名誉教授 矢作 裕 |
13:45-14:30 | 「雪とダイヤモンドダストをつくろう」 | 北海道旭川西高等学校 平松 和彦 |
~ 休 憩 ~
第二部 トーク&ディスカッション
14:50-15:10 | 総合学習サポートページ「雪たんけん館」の活用 | 北海道教育大学附属教育実践センター 高橋 庸哉 北海道教育大学附属札幌小学校 新保 元康 |
15:10-15:30 | 雪を生かした冬季体育 | 北海道大学教育学部 須田 力 |
15:30-15:50 | 雪の冷熱利用をテーマとした総合学習の実践 | 北海道沼田高等学校 依田 玲子 |
15:50-16:00 | 休 憩 | |
16:00-17:00 | ディスカッション 「雪と氷を利用した総合学習の可能性」 |
司会:西村 浩一(北大低温科学研究所) パネリスト:
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主催/(社)日本雪氷学会北海道支部
共催/ 沼田町
内 容:
「氷と遊ぶ」
北海道教育大学名誉教授 矢作 裕
さいころ氷、食塩、ラップを使って、かわいらしい「冷凍装置」を作ることができます。 この装置はマイナス20℃ぐらいにまで冷えるので、いろいろな実験を工夫することができます。 ここでは、つぎの二つの実験を紹介します。
「ストローのなかの氷レンズ」
冬のはじめに地面に霜柱ができることがあります。霜柱は地表にできるだけではありません。寒さの厳しい北海道では、 それができる場所が地中の深い方へ深い方へと移っていきます。この地中の霜柱(氷レンズといいます。)を ストローのなかに作ります。
「氷のステンドグラス」
わたしたちが目にする氷は、多くの結晶からできています。その薄い氷を偏光板というプラスチックを通して見ると 結晶の方向の違いから、きれいに色づいて見えます。この現象を利用して、小さなステンドグラスを作ります。
どちらの実験も、ほとんど台所にあるもので簡単にできます。短い時間ですが、実験を楽しんでください。
「雪とダイヤモンドダストをつくろう」
北海道旭川西高等学校 平松 和彦
水は、自然界では雪や雲などさまざまな姿をしています。気体である水蒸気、液体の水、固体の氷という3つの姿のすべてを、 身近で見ることができるのは地球の上だけです。今回はペットボトルの中に雪を結晶を作る実験を中心に、水がどう変化するのか 学びます。雪の結晶が成長していく時間を利用して、ダイヤモンドダストや雲を作ってみたり、水が凍っていく瞬間を実際に 観察してみましょう。ここでは短い時間ですから基本的なことしか学ぶことができませんが、君達自身がさらにいろいろな工夫を しておもしろい研究へとすすめてほしいと思います。
<子供たちの実験の様子>
雪の結晶を作ろう! | 水が凍結した瞬間を捉えた! |
「総合学習サポートページ「雪たんけん館」の活用」
北海道教育大学附属教育実践総合センター 高橋 庸哉
北海道教育大学附属札幌小学校 新保 元康
「北海道雪たんけん館」を授業で使ってみませんか?
「総合的な学習の実践をしたいけど、何から手をつけたらいいのか・・・」
「保護者の納得を得ることができる本格的な総合を実施したい! ・・・だけど・・・」
と悩んでいる先生はいらっしゃいませんか? 私たち「北海道雪プロジェクト」はそんな皆さんの悩みに応える総合学習サポートページ「北海道雪たんけん館」を作成・運営して います。私たちの願いは次の通りです。未来を創る北海道の子どもたちが日常生活や文化と深く関わる雪を総合的に学び、自然の 偉大さやすばらしさに気づくとともに、雪の困難を克服し、身近な自然を積極的に利用する人間の知恵に学んでほしい! このホームページを授業や教材研究に是非ご活用下さい。また、北海道教育大学を中心として、道内小中高の教育関係者や 研究者からなるプロジェクトの輪に加わって頂ければと存じます。
http://yukipro.sap.hokkyodai.ac.jp
「雪を生かした冬季体育」
北海道大学教育学部 須田 力
雪や寒さは、スキー、スケート、スノーボードなどのスポーツだけでなくさまざまな運動を通してたくましいからだと 生きた学力を身につける機会を与えてくれます。雪かきや雪道歩きのように誰でも日常行っている運動でも、サラサラ雪、 ざらざら雪、しまり雪などさまざまな雪の性質を読み取る感覚の訓練と手足の使い方を学びます。これらの体験雪氷学、 体験生理学、体験物理学こそが、雪国でたくましく生きていくために欠かせない学問です。教育思想家のルソーは、人間にとって 最初の学問は"自己保存に関係した一種の実験物理学"であり、人間の最初の理性はこのような感覚的理性で、その感覚的理性こそが 知的理性の基礎となるものである、と自然を教師としてからだで学ぶ教育の大切さを説いております(ルソー「エミール」)。 この講演で、雪遊び、雪かき、雪道歩きなどの運動を通して雪や寒さから子どもたちがどんなことが学べるのか、話題提供をさせて いただきます。
「雪の冷熱利用をテーマとした総合学習の実践」
北海道沼田高等学校 依田 玲子
本町は現在「雪と共生するまちづくり」を展開し、「雪中米」への取り組みは有名である。本校では、昨年度より 「総合的な学習の時間」を全学年で展開させており、そのテーマの1つが「郷土の自然や歴史、文化への興味関心を高める」と いうことである。そこで、本年度より3学年38名を対象に「利雪学習」を4回にわたり合計10時間で展開させた。 この学習には、町の利雪技術開発センターの「伊東宏城」氏を講師として招き、町の施設である「米穀低温貯留乾燥調製施設」や 生涯学習総合センターの雪冷房施設、雪の科学館、花の育苗に雪冷房を導入している現場を見学した。さらに、雪冷房の歴史や しくみ、他県での取組み等を学び、これらのことをもとに「雪山センター」から雪の冷熱エネルギーを町内施設へ供給する構想を グループ別に描き、発表した。この学習から生徒には「利雪・克雪・親雪」という雪と共生する視点と主体的にまちづくりに 参加する意識が芽生えた。今後はこの学習を継続・発展させ、環境問題を解決する意識と自発的な行動力を高めたい。