Japanese Society of Snow and Ice

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2003年度支部研究発表会

— カテゴリ:

2003年6月26日(木)

2003年度支部研究発表会

日 時: 2003年6月26日(木) 10:30~16:00

場 所: 北海道大学 学術交流会館 第一会議室 (札幌市北区北8条西5丁目)

 

内 容:

 SessionⅠ(10:30-11:15)

 座長:榎本浩之(北見工業大学)

 

○オホーツク海沿岸域の海氷の漂流メカニズム

猪上 淳(オホーツク・ガリンコタワー(株))

オホーツク海沿岸の海氷の漂流メカニズムを調べるため、オホーツクタワーで取得された氷海レーダの画像を、面相関法による画像処理を用いて海氷の移動ベクトルを見積もった。風の効果を組み込んだ調和解析の結果、海氷は時計周りの日周潮流の効果と風の1.5%に相当する速度で漂流することが明らかとなった。大規模な沿岸定着氷の形成/剥離過程には、小潮/大潮に起因する潮流がトリガーとして作用することから、沿岸域の海氷の動態予測において潮流が極めて重要な役割を果たすことが示された。

 

○アルゴスブイと流氷レーダによるオホーツク海北海道沿岸の流氷観測 

舘山一孝、白澤邦男、石川正雄、高塚徹、大坊孝春、豊田威信、猪上淳、高辻慎也、向井祐二、木村詞明(北大低温研)、中山正茂(宇宙開発事業団)、直木和弘(千葉大学)、鈴木英一、杉本綾(海上保安庁水路部)、福田明(静岡大学) 

2003年2月上旬にオホーツク海北海道沿岸における海上保安庁のアイスパトロールの一環として、砕氷船そうやによる海氷観測が行われた際に、雄武町音威子府岬沖5マイルと40マイルの地点にアルゴスブイを投入し、北大流氷研の流氷レーダによる海氷追跡アルゴリズムの実証試験を行った。今回の実験ではブイに小型GPSを付加して位置精度の向上を図った。アルゴスのドップラー式では最大で数kmの位置誤差を示したのに対し、GPSは誤差10m程度であった。この実証データからレーダによる海氷追跡が有効であることがわかった。

 

○電気伝導度式氷厚計の開発 

舘山一孝、白澤邦男、石川正雄、高塚徹、大坊孝春(北大低温研)、新井浩成(道立工業試験場)、鈴木克典、榎本浩之、小嶋真輔(北見工業大学)、洞口克彦(DATTジャパン)

海氷の厚さは温暖化などの環境変動の指標としてだけでなく人間生活に深く関わる重要な情報であるが、現状の技術では自動連続観測は困難である。本研究は氷と海水の電気伝導度の違いが大きく、電気的に結氷を判断できることに着目し、道工試と共同で電導度式氷厚測定装置を開発した。本発表では北見工大との共同で行った低温室実験とサロマ湖湖氷上で行った現場実験の結果について報告する。実験の結果から、本研究で開発された手法により、氷厚を測定できる上に結氷状態の違い(結氷初期、融解、空洞化)も判別できることが示唆された。

SessionⅡ(11:20-12:05) 

座長:松澤勝(北海道開発土木研究所)

 

○積雪を考慮した床面のすべり特性と避難行動について その1  ~床材料の濡れが歩行に及ぼす影響~ 

相茶日出海(北海道工業大学)、内藤恵(㈱雪研スノーイーターズ)、細川和彦、苫米地司(北海道工業大学)

 床材料の濡れが歩行者に及ぼす影響は安全計画上重要な問題である。床材料表面の濡れは、歩行者による屋外からの雨水等の持込が原因であり、転倒などの事故および歩行時間の遅延につながる。建物出入口は避難経路として使用され、転倒や歩行時間の遅延は安全計画上致命的である。歩行者による水分の持込量および濡れ状況下の歩行時間の測定、濡れによる摩擦係数の変動を測定することにより、出入口近傍における床材料表面の濡れ状況が歩行時に及ぼす影響を実験的に検討した。結果、濡れ範囲の拡大により歩行時間の遅延が明らかとなった。

 

○積雪を考慮した床面のすべり特性と避難行動について その2  ~積雪および床のすべりを考慮した避難時間の推定~

内藤恵(㈱雪研スノーイーターズ)、相茶日出海、細川和彦、苫米地司(北海道工業大学)

積雪期の屋外状況は、積雪による歩行速度の低下および通路幅員の減少などが確認され、早急な対策が必要である。屋内では、持ち込まれた雪による床の濡れがすべりを引き起こす。しかし、このような現象が避難行動の阻害に直接的につながることへの認識はなされていないのが現状である。これらの現象が避難行動に与える影響を認識することを目的に、システムダイナミックスを用いた避難時間のシミュレーションを行った。結果、屋内の濡れ状況により避難時間が遅延し、屋外避難経路の管理状態が不十分な場合その遅延はさらに増大した。

 

○並木の除雪による被害とその対策としての防雪杭の効果 

斎藤新一郎(環境林づくり研究所)、小泉重雄(北海道開発局岩見沢道路事務所)

 多雪地域における道路沿いの並木は、その多くが、多少とも、除雪にともなう被害(雪圧害:幹折れ、幹曲がり、枝抜け)を受けている。被害のいちじるしい国道12号(美唄市茶志内町)を対象に、雪圧害を軽減する手法として、並木の手前に防雪杭(地上高1.50m)を設置してみたところ、たいへん良い成果を得たので、報告する。

SessionⅢ(13:05-14:20) 

座長:尾関俊浩(北海道教育大学岩見沢校)

 

○人工雪を用いた風洞実験による吹きだまり形成の再現 

中静仁平、細川和彦(北海道工業大学)、老川進(清水建設)、苫米地司(北海道工業大学) 

 冬季間における積雪寒冷地の建物周辺に形成される吹きだまりは、日常生活の妨げとなる。大規模建築になると周辺の建物ならびに人が行き来する歩道、車道に形成され避難経路の寸断にもつながり、人命に関わる重大な問題となる。そこで、設計・計画の段階で活性白土等を用いた風洞実験を行い、吹きだまりを再現してきた。しかし、粉体風洞実験は実現象を十分に再現していない。このことから実現象の吹きだまりを再現し、再現するために必要な条件を確立することを目的に人工雪を用いて風洞実験を実施し、吹きだまりの再現を試みた。

 

 ○雪粒子飛び出し風速と雪粒子形状 

佐藤研吾、高橋修平(北見工業大学)

2003年1月1日から2月28日において、雪面上の雪粒子の変態が及ぼす影響を調べるために、風洞を使用した飛び出し風速VT、終端落下速度w、安息角の観測を行った。また雪粒子結晶形の分類を顕微鏡写真を用いて行った。乾いた新雪の場合は飛び出し風速VTは3~5(m/s)、終端落下速度wは0.5~1.5(m/s)、安息角は80°以上となった。上記の要素を用いて、雪粒子間の結合力を概算すると新雪の場合は0となるが、数日経過し融解変態した雪粒子は2~20くらいなった。

 

○積雪層構造予測シミュレーションの開発と利用について 

齋藤佳彦、榎本浩之(北見工業大学)

近年、積雪に関する数値モデルが開発されているが、この研究では、アメダスデータ(降水量、気温)を利用した、少ない入力で動作するモデルを検討した。現段階のモデルでは、積雪深、雪温、密度、雪質、しもざらめ化した雪の発生などデータを含む積雪層構造予測が可能である。北見工業大学敷地内で行った断面観測データと比較を行った結果、積雪深、しもざらめ化した雪の発生の推定はよい傾向を示したが、雪温、密度の推定についてはまだ改良が必要である。今後は他の雪氷情報や衛星積雪データとの相互利用の可能性を探る。  

 

○降雪遮断による酸素同位体比の変化 

山﨑学、宍戸真也、石井吉之、児玉裕二(北大低温研)、橋本哲(島根大学)

常緑針葉樹林による降雪遮断量を酸素同位体比(δ18O)を使って評価できるか吟味するために、林外と林内における降雪量と降雪のδ18Oの違いを調べた。厳冬期の1ヶ月間(1/23-2/26)における林外と林内の降雪量はそれぞれ160mmと76~107mmで林内が少なく、降雪のδ18Oは-14.3‰と-11.7~-13.0‰で林内が重かった。遮断蒸発よって林内の降雪は林外よりδ18Oが 重くなリ、また林内のδ18Oのばらつきが大きくなるのは、樹冠上において滞留時間の異なる雪が雪面に落ちるためと考えられた。

 

○自然通風筒を使用しない気温測定の問題点と対策 

高山拓也、高橋修平(北見工業大学)

 無電源地域での無人気象観測に使用される自然通風筒は風が弱い時に日射によって通風筒が温度上昇し、測定温度が高く現れる問題点がある。南極の無人気象観測においても、夏期に日中の風速1~2[m/s]以下で昇温する現象が見られる。昇温したデータは、太陽高度および風速を考慮して取り除くが、風速データがない時はその判定基準を定めるのが難しい。低温のために通風装置動作が難しくなる極地での観測を想定して、白と黒に塗ったセンサーとステンレスカバー付きセンサーによる測定温度を利用して正しい気温を求める方法を試みた。

SessionⅣ(14:30-15:45) 

座長:丹治和博(日本気象協会)

 

○膨張収縮する材料を利用した着雪対策について 

千葉隆弘、竹内政夫((㈱)雪研スノーイーターズ)

建物や道路構造物の着雪対策は、着雪面をヒーティングすることや撥水性の高い塗料を用いることが行われてきた。特に、塗料はメンテナンスフリーの対策が実現するとされ数多く用いられた。しかし、汚れの付着で高い撥水性が失われる等の問題がある。本報告はこれまでの対策に代わるものを検討し、実験で確認することを目的としている。今回は円形断面の部材に巻き付けた膜材に空気を送り込み膨張収縮を繰り返すことで着雪を早期に滑落させる実験である。実験の結果、膜材の伸縮によって着雪が早期に滑落し、着雪防止の可能性を確認した。

 

○橋梁の着雪・冠雪対策に関する研究 

布施浩司、岳本秀人(北海道開発土木研究所)

 積雪寒冷地である北海道の道路構造物のうち、アーチ・トラス橋梁の上弦材のような道路を横断した形式で設置されている構造物に於いて生じる着氷が、通行車両の振動や気温の上昇により落下する事故が報告されている。最近、こうした事故等を防止するために様々な対策がなされており、また雪下ろしといった維持作業が行われているが、高所作業であり苦慮しているところである。そこで、橋梁の着氷雪観測調査、着氷雪対策箇所実体調査及び屋外での着落雪実験結果をもとに、着氷雪対策の特性評価と対策適用について報告する。

 

 ○現地観測による吹き止め式防雪柵の防雪効果について 

伊東靖彦、松澤勝、加治屋安彦(北海道開発土木研究所)

2002-2003年の一冬期間について、天塩町オノブナイの牧草地内に吹き止め式防雪柵を設置して柵前後で風速および視程を測定し、柵による道路上の視程環境の改善効果について整理した。その結果、柵に対する風の入射角によって風速の低減効果に差があることがわかった。また視程の改善効果では、風上側の視程が100m以上の場合に大きく改善したが、100m未満となる著しい視程障害では改善効果がみられなかった。

 

 ○タクシーGPSデータを活用した札幌市の冬期交通特性

高橋尚人、宗広一徳、浅野基樹(北海道開発土木研究所)

 札幌市の年間降雪量(平年値)はおよそ5mに達し、冬期には降積雪の影響により、道路交通機能は著しく低下する。冬期における代表的な道路交通調査としては冬期道路交通センサスがあるが、数年に一度の調査で、調査日数、調査地点数が限られており、冬期の交通特性を十分に把握することが困難である。本稿は、プローブカーデータ活用の一例として、札幌市内を走行するタクシー115台の走行データをプローブカーデータとして利用し、札幌市の冬期交通特性や冬期道路管理対策の効果を定量的に把握したものである。

 

 ○道路構造の違いと冬期路面温度との関係に関する分析 

宮本修司、高橋尚人、舟橋 誠 、浅野基樹(北海道開発土木研究所)

路面凍結の発生しやすい箇所の事前把握を目的に、日高自動車道でサーマルマッピング調査を実施した。その結果、特に橋梁部の路面温度が土工部よりも低くなっていることや、橋梁の中でもRC床版橋と鋼床版橋で路面温度が異なっていることが確認できた。そこでさらにサーマルマッピングで抽出した箇所に路面温度の測定装置を設置し、路面凍結の発生しやすい条件について道路構造別に分析した。
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