あらたな出発に際して
(社)日本雪氷学会北信越支部設立20周年記念講演会(2007年12月10日開催) 支部長挨拶より
1987年(昭和62年)の9月に日本雪氷学会北信越支部が設立されました。爾来、この20年の間、絶え間なく活動を継続されてきた諸先輩に心から敬意と感謝を捧げたいと思います。設立年の1987年と言うのは、特別な年として私は考えております。前年、1986年(昭和61年)の61豪雪を最後に全国的に暖冬少雪が始まり、平成18年豪雪の到来まで20年近く少雪年が続きました。この1987年に始まる暖冬少雪の期間、雪氷研究は雪害対策一辺倒から、親雪、利雪などのキーワードが広く使われ、研究の広がりが期待されて来ました。
日本雪氷学会はご承知のように北海道、東北、北信越、そして関東以西と4支部体制になっております。当北信越支部は、福井、石川、富山、長野そして新潟の5県からなり、日本一の豪雪地帯であり、世界にもまれな温暖積雪地帯であります。一方、日本アルプスを中心とする山岳積雪地帯は、暖冬少雪にも拘わらず大量の山岳積雪を擁しており、平地の雪害から雪崩や雪渓まで、多くの課題研究を抱える雪氷学の宝庫でもあります。従って当支部では、戦前からの鉄道分野、農林業分等で先進的な研究がなされてきたところであります。加えて、史上最大規模の災害をもたらした38豪雪を機に、雪害研究の中心的役割としての期待を背負っております。
さて、当北信越支部を取り巻く情勢は決して楽なものではありません。新たな問題解決を必要としております。今年度から発足した新しい支部執行部は大きな変革を実行させていただきました。徹底した財政縮小とそれに伴う、役員人事の刷新です。さらに、印刷媒体を縮小し、デジタル化による情報伝達です。これには、今まで支部を支えて来られた諸先輩、全会員の暖かいご理解とご支援が不可欠です。若い支部執行部は素晴らしいチームワークとフットワークの軽さでこのような新しい改革に取り組んでおります。ITネットワークの威力も大きな武器となっています。
20周年を迎えた本年度は当支部の新体制構築、来年度からはこれを基に新たな学会活動の開始年と考えております。財政逼迫、会員の減少、その大元には大学・研究機関の縮小、企業活動の低下等々があります。しかし、決して暗い面ばかりを見る必要はありません。
長い基礎研究は少しずつ、社会に役立つ成果を生み出しつつあります。ローカルの雪害もより広域の環境認識を通じて、グローバルの問題と結びついてきました。
支部活動もローカルの良さを大事にしつつ、学会全体との協調を進めることで、4支部に籠もりがちだった情報の共有が計られるでしょう。縁の近い雪工学会との協同も多くの実りをもたらすはずです。言い古された感のある産官学の協力に関しても、最近ようやく多くの成果が見られてきたと感じています。さらに、市民を巻き込む活動も重要であることを、中越地震、平成18年豪雪の災害を経験して学んだところであります。取りわけ、中越地震後に活動した「中越地震雪氷災害調査検討委員会」は学会の枠を越えた地域の研究者・技術者による記念すべき共同作業でありました。
伝統ある雪氷学会北信越支部の健全な発展と、社会に役立つ存在であるために、支部役員は今後とも努力を惜しまない覚悟であります。皆様方の益々のご鞭撻・ご協力を賜りますよう、心からお願い申し上げる次第であります。
日本雪氷学会北信越支部支部長 佐藤篤司(防災科学技術研究所 雪氷防災研究センター長)