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アルゼンチン氷河台帳問題に対する日本雪氷学会からの声明文

学会員の皆様 学術委員長の青木です。 現在、アルゼンチンの氷河研究者、リカルド・ビラルバ博士が彼の研究成果が原因でアルゼンチンの司法当局から訴えられています。訴訟の概要は、同博士が中心とな ...


学会員の皆様

学術委員長の青木です。

現在、アルゼンチンの氷河研究者、リカルド・ビラルバ博士が彼の研究成果が原因でアルゼンチンの司法当局から訴えられています。訴訟の概要は、同博士が中心となって作成した氷河インベントリに0.01
km2未満の氷河が記載されておらず、そのために鉱山開発が進められて周辺環境が汚染されたというものです。これに対し、国際雪氷学会は「氷河インベントリに記載する氷河の基準サイズが問題なのではなく、こういった科学的成果に対して後付けで訴えられていること自体が科学コミュニティに対する脅威である」との声明文を発信しています(関連リンク参照)。

この問題に対して、日本雪氷学会から高橋修平会長名で以下の声明文を発表する予定です。この声明文(案)に対して、ご意見や質問のある方は学術委員長
(teaoki _at_ okayama-u.ac.jp) までお寄せ下さい。

周知期間:4月6日まで
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アルゼンチン氷河台帳問題に対する日本雪氷学会としての声明文(案)

日本雪氷学会は、Instituto Argentino de Nivología, Glaciología y Ciencias
Ambientales (IANIGLA: アルゼンチン雪氷環境科学研究所) の前所長である、リカルド・ビラルバ博士
(Dr. Ricardo Villalba) に対する告発に関して懸念を表明する。
原告の主張によれば、ビラルバ博士の主導によって作成されたアルゼンチンの氷河台帳には、博士の職権乱用によって面積0.01
km2以下の氷河が含まれておらず、その結果として許可の下りた鉱山開発によってイェカル川
(Río Jáchal)
流域の環境汚染がもたらされたとのことである。しかしながら、アルゼンチンの氷河台帳の作成を計画した際の、氷河として検出する最小面積を
0.01 km2
とする基準は広く氷河研究コミュニティの間で受け入れられており、氷河台帳を現実的なタイミングで完成させるために必要かつ十分な、国際基準に則した合理的な判断基準であり、科学的見地からもこの基準を決めたことは職権乱用と言えるものではない。
氷河台帳は、地域水資源の現状把握や将来予測などに利用されている。また、全球的な氷河縮小の海水準上昇への寄与といった課題について、政策決定者に情報提供がなされる際に役立てられている。氷河台帳の作成は、時間と手間のかかる作業である。全球を網羅する最初の氷河台帳は2012年にようやく整備され、その概要を記した科学論文は2014年になって出版された
(Pfeffer et al., 2014)。氷河を判別する際、0.01 km2 (1ヘクタール)
未満の氷体を無視するという基準は1970年代に確立されたものである。この世界基準は、地域の氷河マッピングにとって適切なものとして科学的にもその正当性は確かめられている。台帳に記載しうる氷河はそのサイズが小さくなるに従って数が急激に増えるため、極めて小さい氷河を台帳に含めてしまうと、台帳作成の時間と手間は非現実的なレベルにまで増大してしまう。さらに、氷河の最小面積の基準は、季節積雪を含めてしまうリスクを減らすためにも必要である。氷河は流動する越年氷体として定義され、季節性もしくは越年性の雪渓は氷河とは見なされない。極めて小さい雪氷体が流動する氷を含む氷河であるか、単なる雪渓であるかを簡便に判断できる合理的な方法は無いため、最小面積を設定することは世界の全ての氷河台帳で採用されているのである。

日本雪氷学会会長 高橋修平

引用文献
Pfeffer, W.T., 18 other authors and the Randolph Consortium, 2014, The
Randolph Glacier Inventory: a globally complete inventory of glaciers,
Journal of Glaciology, 60(221), 522-537.
http://dx/doi.org/10.3189/2014JoG13J176.
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関連リンク
International Glaciological Society:
POSITION PAPER OF THE INTERNATIONAL GLACIOLOGICAL SOCIETY ON STANDARD
PRACTICES REGARDING GLACIER INVENTORIES, 21 December 2017
https://www.igsoc.org/news/igs_villaba2col_engesp20171220.pdf

Science, 5 December 2017: “Argentine scientist indicted over design of
glacier inventory”
http://www.sciencemag.org/news/2017/12/argentine-scientist-indicted-over-design-glacier-inventory

Nature, 6 December 2017: “Argentinian geoscientist faces criminal
charges over glacier survey: government researcher Ricardo Villalba
stands accused of shaping a study to benefit mining interests”
https://www.nature.com/articles/d41586-017-08236-y

Website about the case Villalba:
http://con-cienciaxnuestrosglaciares.000webhostapp.com/index.html

ScienceAlert, 11 December 2017: "Argentinian Scientist Faces Criminal
Charges Over Cyanide Pollution of Glaciers"
http://www.sciencealert.com/argentinian-scientist-faces-criminal-charges-over-cyanide-pollution-of-glaciers-villalba-environment

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Teruo Aoki, Prof., Ph. D.
Graduate School of Natural Science and Technology,
Okayama University
3-1-1 Tsushima-Naka, Kita-Ku, Okayama 700-8530, Japan
Phone: +81-86-251-7884, FAX: +81-86-251-7895
e-mail: teaoki _at_ okayama-u.ac.jp
http://earth.desc.okayama-u.ac.jp/ja/research/research_aoki.html
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